STORY & HINT 物語から見つける、新しい自分

「何も特別じゃない」と思っていた。7年分の仕事を書き出すまでは

「何も特別じゃない」と思っていた。7年分の仕事を書き出すまでは

職務経歴書を開いても、「電話対応」「入力」「資料作成」の3行で手が止まる。そんな真由さんが見つけたのは、新しく身につけた資格ではなく、7年間ずっと当たり前に続けてきた工夫でした。

※この記事は、複数のキャリア相談例をもとに再構成したモデルストーリーです。特定の個人・企業を描いたものではありません。

同期の転職報告が、まぶしく見えた夜

営業事務として7年働く真由さんは、同期から「Webサービスの会社へ転職する」と聞きました。新しい肩書、知らない業界、これから始まる仕事。話を聞くほど、自分だけが同じ場所にいるように感じました。

帰宅後、求人サイトを開きました。しかし「あなたの強みは?」と考えた瞬間、画面を閉じてしまいます。資格はない。売上をつくる職種でもない。職務経歴書の下書きには、担当業務が3行並んだだけでした。

「毎日ちゃんと働いてきた。でも、書けることは何もない気がする」

この感覚は、経験がないからではなく、仕事を「作業名」だけで見ているときに起こりやすいものです。

「何をしたか」ではなく、「誰がどう助かったか」

転機は、職場の先輩に何気なく相談したことでした。先輩は「真由さんが休みの日、問い合わせの振り分けに時間がかかる」と言いました。

真由さんは、問い合わせを内容別に分類し、担当者と回答例を一覧にしていました。新人が入ったときは、その表を使って説明し、迷いやすい内容には補足も追加していました。本人にとっては「仕事を回すための普通のこと」。でも周囲にとっては、判断を速くする仕組みでした。

POINT

作業名を「相手・工夫・変化」に翻訳する

「電話対応をした」だけでは、経験の価値は伝わりにくいものです。「誰の困りごとに対して」「どんな工夫をして」「何が変わったか」まで書くと、その人らしい力が見えてきます。

同じ仕事でも、見え方は変わる

作業名だけ:電話対応、問い合わせ取次

経験として:問い合わせ内容を分類し、担当者が判断しやすい形で共有。よくある質問を一覧化し、新人が確認しやすい状態を整えた。

7年間を、場面ごとに拾い直した

真由さんは、過去の仕事を年表にするのをやめ、「助かった人」を思い出すことにしました。急ぎの依頼を整理した日、引き継ぎ表をつくった日、後輩の確認に付き合った日。小さな場面を書き出すと、共通点が見えてきました。

真由さんが得意だったのは、ばらばらな情報を整理し、人が動きやすい状態にすること。そこで応募先も、肩書だけで選ばず、顧客支援や業務サポートなど、その力が使える仕事まで広げました。

面接では「事務しかしてきませんでした」とは言いませんでした。「人と情報の間に入り、次の人が判断しやすい形へ整える仕事を続けてきました」と伝えました。言葉が変わると、自分の7年間の見え方も変わりました。

経験を拾う3つの問い

  1. 先週、自分の仕事で助かった人は誰だったか
  2. 頼まれた通りではなく、自分で工夫したことは何か
  3. 自分が入る前と後で、少しでも変わったことは何か

転職だけが答えではない

棚卸しをすると、転職したい理由まで見えます。今の職場で役割を変えれば力を生かせる人もいれば、別の環境で試したい人もいます。経験を言葉にすることは、辞める決意を固める作業ではありません。自分に合う次の選択肢を増やす作業です。

数字や成果を無理につくらない

「時間を50%削減した」など、確認できない数字を足す必要はありません。担当範囲、工夫、周囲から受けた反応を具体的にするだけでも十分です。守秘義務がある情報は一般化して書きましょう。

今日からできる小さな一歩

  1. 最近「ありがとう」と言われた場面を一つ書く
  2. その場面を「相手・工夫・変化」の順に3行で書き直す
  3. 信頼できる同僚に「私がいると助かる場面」を一つ聞く

強みは、特別な経歴の中だけにあるものではありません。毎日の仕事で自然に選んできた行動の中に、次の自分へつながる手がかりがあります。